大日方邦子のコラム

パラリンピックイヤー いよいよ開幕! 《月刊スキージャーナル 2005年12月号》

最終更新日: 2007/09/18 | Edit

 紅葉の便りが山から届き始め、富士山で初冠雪が観測されたというニュースを聞く頃になると、いよいよシーズン近し、とそわそわ落ち着かなくなるのは、雪山をこよなく愛する人たち皆が共有する心持ちだろう。

 私の今シーズンのスケジュールも、ようやく見えてきた。どうやら過去に経験したことがないほど、1シーズン中に日本と外国を飛行機で往復することになりそうだ。しかも、その1回目はもう目前に迫っている。あと10日もすれば、私の05/06シーズンが幕を開けるのだ。


 シーズンイン合宿は、オーストリアの氷河、ゾルデンで行なわれる。ゾルデンで開かれる健常者のワールドカップ開幕戦の前夜に現地入りし、まずは世界レベルの試合をしっかり見てから、同じ場所でトレーニングを積む予定だ。国内ではまだ滑れる場所がほとんどないこの時期に、ヨーロッパの氷河に滑りに行くのは、4年ぶりになる。


 ここ数年は、10〜11月になると、人工降雪機が稼動できる気温になるのがいつなのか、天気予報をこまめにチェックし、薄汚れた東京の空を見上げてはため息をついていた。スロースターターの私は、数カ月のオフシーズン明けに滑り出すと、雪上での感覚を取り戻すのに時間がかかることが自分でもわかっているので、シーズンインを早める必要性を人一倍強く感じている。


 とくに試合数が多い今年は、トップシーズンに腰をすえてトレーニングだけに取り組める日数が少ないことを考えると、例年以上に雪上トレーニングを早く始めたいと思っていたので、この合宿は実り多いものになるだろう。


 この合宿に向けて、チェアスキーのシートやプロテクターを作り直し、ショックアブソーバーのオーバーホールを行なった。今シーズン用のスキー板もすでに届いているので、センターポジションの確認やショックアブソーバーの調整を行ない、用具と滑りとのマッチングを雪上で詰めていきたい。


 ただ、このまま一気にシーズン突入とはいかないのが、パートタイム・アスリートのつらいところ。2週間ばかり滑り込んで帰国したら、職場に復帰し、ペースを上げて番組を1本作り上げなければならない。雪上に戻れるのは、早くても11月末になりそうだ。そして12月1日からは約20日間にわたり、ふたたび全日本チームの合宿が行なわれる。オーストリアでトレーニングをしながら、選手の仕上がり具合をみてヨーロッパカップにも参戦する予定だという。


 実を言うと、この2回目の合宿への参加は、私自身まだ迷っている。というのは、10〜12月に実施される2度の合宿は費用の自己負担率が大きく、両方に参加するにはA指定選手でも約70万円が必要になるからだ。チームには少しずつ、スポンサーがついてくれているようだが、それでもまだま済的な負担は大きい。12月になればもう、国内のスキー場もオープンするので、予算のことを考えると、国内で自主トレをしていたほうがよいのかな、とも悩んでいるところである。


 パラリンピックイヤーの今シーズン、もうひとつのビッグイベントといえるのが、韓国と日本で開かれるワールドカップ・アジアシリーズだ。年が明けると、まもなく国内での試合が始まり、1月下旬には韓国へ遠征する。数年前から、チームキャプテン会議などで日本でのワールドカップ開催が求められていたが、ついにアジアで初めて障害者のワールドカップが開かれることになったのだ。


 韓国の会場は、2014年のオリンピック開催地に立候補しているピョンチャン。そして日本では、長野パラリンピックが開かれた志賀高原・西館山が舞台となる。


 長野パラリンピックに参加した経験を持つ外国チームのメンバーにとって、長野は忘れられないスキーエリアだ、という話をしばしば耳にする。


 完璧なコース整備をはじめとする見事な大会運営、観客たちの温かい声援、おおいに盛り上がった大会ムードを知る諸外国関係者からの「もう一度、あの長野で国際大会を」という声は、日本人の私にとってはうれしい限りである。


 また、ワールドカップが日本やアジアで開催されれば、長いフライトに耐えてヨーロッパやアメリカに行かなくてすむメリットがあるうえ、遠征にかかる経済的な負担も軽くなる。国際大会が地元で開かれれば、若手選手がASDポイント(※FISポイントに相当)を取得して世界の舞台に立ちやすくなるメリットもある。その意味でも国内、あるいはアジアで世界大会が開かれる、というのは次世代を担う若手の育成、そして競技環境の向上のためにもとても有効なものだ。


 志賀高原でのワールドカップは1月30日〜2月1日。世界のトップレーサーの滑りを間近で見られる絶好の機会なので、ぜひ多くの方に会場に足を運んでいただきたいと願っている。長野パラリンピック時に比べ数倍、進化した技術に驚き、感動してくれるのではないだろうか。


 またワールドカップ終了後には、白馬八方尾根でもレースが行なわれる。毎年行なわれているジャパンパラリンピックが、ついにASD公認となった記念すべき大会だ。引き続いて行なわれる高速系合宿も含めて、八方の方々が尽力してくれた成果だと感謝している。


 そして2月21日には、いよいよイタリアに向けて出発する。パラリンピックの前哨戦となるワールドカップに参戦してから、セストリエールに乗り込む予定だ。


 考えてみると、4回も巨大な荷物を抱えて飛行機での移動をしなければならず、精神的にも肉体的にもタフであることが求められるシーズンになりそうだ。試合数も多いので、疲れをためこまないためにも、ひとつひとつの試合に平常心で臨めるような工夫が必要だろう。